日中棺桶交流 (菏泽市余談)

令和6年10月28日
 斎藤総領事は、今回の菏澤市滞在中に、是非訪問してみたい場所がありました。市中心部から南に車で約1時間の場所にある曹県です。
 曹県は数年前、日本の某テレビ番組で「棺桶の町」として紹介され脚光を浴びました。曹県の主力産業の一つは木材加工ですが、なんと日本で使われている棺桶の9割が曹県製であるという驚くべき内容でした。
 10月15日、総領事が訪問したのは雲龍木彫工芸有限公司です。蔡秀芳董事長は木彫り師の家系に生まれ、自身は6代目にあたるそうです。会社立ち上げ時は各種の工芸品を製造していましたが、90年代後半から日本向けの棺桶など葬祭用品も手がけはじめ、今では曹県で最大の日本輸出拠点に成長しています。
 同社によると、現在日本で使われている棺桶の6~7割が曹県製で、同社だけで日本全体の3~4割のシェアを占めるそうです。1日あたり2000基の生産量と聞けばそれも納得です。展示スペースには、伝統的な工芸品各種とともに日本で見慣れた棺桶、葬式用及び家庭用の仏壇、位牌などが並んでいました。日本人の何気ない生活の中で、ここまで山東省との関係が深いことを知り、大変驚きました。
 残念ながら菏澤市や曹県の名は日本でほとんど知られておらず、また菏澤市には日本企業もほとんどありません。他方、この棺桶交流の例は、目に見えない貿易面で両国間に実はかなり大きな相互依存関係があることを示しています(檜の原木は日本から輸入している)。今後の日中間の経済交流のあり方を考える上で、一つの重要なヒントを与えてくれているような気がします。