斎藤総領事の平度市キムチ産業の視察

令和6年11月5日
 10月18日、平度市を訪問中の斎藤総領事は、青島市及び平度市外事弁公室の協力を得て、キムチの生産に従事する代表的な中国企業2社 (青島農一食品有限公司、青島新故郷食品有限公司) を訪問しました 。
 もともと山東省は「キムチ大国」である韓国に極めて近い上、白菜の生産量が国内全体の20%を占めるなど、キムチ産業に適した環境にあります。その中で2000年以後、韓国向けの輸出に積極的に乗り出したのが平度市です。
 現在、韓国が輸入しているキムチのほぼ全てが中国産、うち青島産が8割に上るそうです。中でも平度産は約6割を占める「稼ぎ頭」で、20社以上がキムチ産業に従事しています。
 訪問した両社とも、生産する過半数が韓国向けですが、近年はカナダ、米国、オーストラリア、東南アジアなどにも輸出先が拡大している点も共通しています。地元である山東省でキムチなどの発酵食品を好む習慣が育っていないのは  残念ですが、両社によると最近は沿岸部から内陸部へと中国国内市場にも徐々に販路が拡大しているそうです。
 日本にも伝統的に発酵食品を好む文化が根付いており、キムチにも高い人気があります。ところが、これだけ韓国向け輸出が盛んな中で、平度産キムチはまだ日本市場にほとんど流通していません。確かに日本では自国産で供給がほぼ足りているという事情はあるのですが、加えて味付けの嗜好が韓国と異なることや、小分け生産への投資など費用対効果の面でも課題があるようです。但し、訪問した両社とも、近々 本格的に日本市場へのアクセスを始める予定とのことでした 。
 気候変動により世界的に農産品の生産が不安定化しつつあり、それが原因でキムチ輸入が始まったとされる韓国の事情は、日本にとっても他人事とは思えません。地理的に近く食文化も似ている日中韓の三カ国間で、食品分野の相互依存が高まるのは自然の流れと言えるでしょう。「日中韓産業協力」という観点からも、「キムチ交流」は一つの興味深いテーマとなり得る、そんな気がします。