「孫子の兵法」の故郷を訪ねて

　11月に斎藤総領事が訪問した東営市広饒県は、「孫子の兵法」の作者である孫武の出身地と言われています。
　「孫子の兵法」は、8世紀に遣唐使だった吉備真備により日本に伝来したとされています。その後、中世には武将の戦術バイブルとして、また現代でも実業家の心得として、多くの日本人に愛されてきました。中でも、戦国武将・武田信玄が旗指物に採用した「風林火山」(中文: 其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山) の四文字や、「戦わずして勝つ」(中文: 不戦而屈人之兵) という思想は広く親しまれています。
　広饒県には、孫武に関連する観光スポットとして孫武祠があります。孫武の生涯を紹介する資料館に加え、高さ3メートルの孫武の大理石像、山東省で唯一という南宋時代の木造建築(武聖殿) など、落ち着いた雰囲気の中で孫武の偉大さを偲ぶことができます。
　孫武に関しては、東営市に隣接する濱州市の惠民県を出生地とする説もあるようです。何れにせよ、孔子や孟子と並び日本にも大きな影響を与えたもう一人の偉大な古代思想家が、ほぼ同時期にこの山東省の地に誕生した奇跡は不思議に思えてなりません。