斎藤総領事挨拶

令和7年9月29日
斎藤総領事新年挨拶
 青島はすっかり涼しくなり、本格的な秋の到来を感じさせます。今年の主要行事の一つは、7月に大阪・関西万博の期間中に開催される「山東ウィーク」や「対話山東」(日中経済対話プラットフォーム)でしたが、多くの皆様のご協力により何れも無事に終えることができました。私自身も開幕式に出席し、直接日本の皆さんに当地の魅力を発信することができました。
 さて今年は、第二次世界大戦が終わり80周年という節目にあたります。辛酸をなめ二度とこのような惨禍を起こすまいと誓ったはずの国際社会ですが、今再び分断と対立に向かいつつあるように思われます。これまで皆が当然として受け入れてきた国際秩序や共通の価値観が歴史的な挑戦を受けている、あの歴史の教訓はどこに消えてしまったのか、そんな気がしてなりません。
 日中関係に目を移せば、日本の歴史認識や戦後日本の国際貢献に対する中国側の評価は、両国間で交わされてきた4つの基本文書の中で集約されているとおりです。その上で「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築しようという大きな方向性に向かい前進しようとしているのが現状です。まがりなりにも東アジアにおいて、半世紀以上にわたり安定した発展を享受できているのは、この大きな「柱」の存在があってこそだと実感します。
 他方、経済成長の副産物ともいえる地球温暖化や少子高齢化など、新たな共通の難題が私たちの生活を静かに脅かしつつあります。これらの影響は今後強くなる一方であることは明白で、一国での対応には限界があることから、私たちはこれまで以上に連携を深め、それぞれの経験・英知を「全集中」して、速やかにこれらの課題に挑戦していく必要に迫られています。
 その意味で、日本から近く、儒教の発祥地としての親近感があり、経済大省という優位性を有する山東省は、これら課題に共同で取り組むプラットフォームとして理想的な条件を備えていると言えます。大きな節目の年も間もなく終わろうとしています。残りわずかな時間ではありますが、戦後の80年間にそれぞれの国が歩んできた道に思いを馳せ、新たな日中関係のあり方を考える、そんな大切な時間にしたいと思います。
 
2025年9月
在青島日本国総領事
斎藤 憲二