斎藤総領事挨拶

令和8年8月11日
斎藤総領事新年挨拶
 今年も暑い夏の季節を迎えました。私たち日本人にとっては、近代史を振り返り平和への誓いを再確認する大切な季節でもあります。明るい夏の雰囲気にはそぐわないかもしれませんが、歴史問題は日中間の重要なテーマでもあるので、今回は日本側の立場についてご紹介しておきたいと思います。
 日本政府の歴史認識については、戦後50周年(1995年)、60周年(2005年)、70周年(2015年)に、それぞれ時の首相が反省とお詫びの気持ちを正式に表明しており、今に至るまで歴代の政権はその姿勢を踏襲しています。そしてその姿勢を体現すべく、日本は戦後、政府開発援助(ODA)や民間交流などを通じ、国民が一丸となり周辺諸国との信頼・友好関係の構築に努めてきました。
 このように、過去の歴史を反省した上で、平和な世界を周辺諸国・地域の理解と協力とともに築きたいとの思いは、もちろん中国に対しても同じです。そしてその精神は日中間の外交の基礎となっている過去4回の基本文書の中でも色濃く反映されています。中国側も2008年に発表した文書の中で、このような戦後の日本の平和国家としての歩みを積極的に評価しています。
 日本は自由民主の国です。各人が自己の意見を表明するのは自由で、公開議論というプロセスを経て合意に至ったものが国の方針・政策となっています。戦後80年以上を通じ、政権は変われど、また様々な意見の衝突はあれど、先の大戦への評価と平和国家への願いという点では、国家としてのぶれは全くありません。こうした一貫性が、多くの国々から信頼を勝ち得る原動力となり、日本に対する好評価に繋がっていることを、日本人の一人として大変誇りに思っています。
 成長を続ける情報社会の反作用として、一部の発言や行動が断片的に切り取られたまま曲解された形で拡散され、人々がそのような情報に容易に振り回されるリスクが高まっています。こんな時代だからこそ、何が事実で本質なのかを見極める「目」が重要です。「一葉障目,不見泰山」「実事求是」という成語は、暗記が必要な古語ではなく、まさに現代に生かすべき教訓と言えます。
 歴史を直視することはとても重要です。ここで言う「歴史」は、日中関係の場合、不幸な戦争時代だけでなく、その前後の長い交流の期間も対象に含まれます。事実を科学的・客観的に見つめ、事の本質を見極めることで、はじめて複雑化の増す国際社会をともに乗り越えていくための「あるべき姿」が見えてくるのだと思います。夏の日差しにきらめく青島の美しい海を眺めながら、今年も両国間の長い交流の歴史を振り返りつつ平和と友好への誓いを新たにしたいと思います。

 
2026年8月
在青島日本国総領事
斎藤 憲二