王懿荣記念館の訪問

令和7年3月13日
 煙台市には、同市出身で1899年 に甲骨文字を発見した王懿荣の記念館があり、その前庭には日本を代表する篆刻家・師村妙石氏の寄贈による一対の刻石があります。3月上旬、煙台市を訪問中の斎藤総領事は、これらを見学に訪れました。
 1845年生まれの王懿荣は、代々続く地元名士の家系に育ち、進士 (科挙合格者)であるとともに、書家でもありまた金石学者でもありました。烈士として亡くなる1年前の1899年、自身用に漢方薬を調合するため購入した古代動物の骨に奇妙な図形が刻まれていることにふと気づいたそうです。
 その後も研究を続け、それが殷商時代(3600年以上前)の文字であることを解明したことで、「甲骨文字の発見者」として歴史に名を馳せることになりました。まるで「人生は最後までチャンスがあるぞ!」と教えられているような気がしますね。
 煙台市の中でも福山区や莱州市は書家との縁が深いらしく、記念館の中に も著名書家たちの多数の作品が展示されています。そのような人脈から、師村先生の刻石が、地元篤志企業家の支援 を得て、2019年に設置されることになったようです。この年はちょうど甲骨文字発見120周年にあたります。
 作品は2点あり、1点は「甲骨文字の父 王懿荣先生」、もう1点は「世界は一つの戯れの場にして戯れの中に更に戯れあり」と刻されています。石は莱州産の大理石とのことで、2メートル四方、厚さが20センチあるこれら刻石は見た目も立派でした。
 宮崎県出身で今年76歳を迎えられる師村氏は、既に中国に230回以上の来訪歴があり、今でもお元気に日中間の文化交流に尽力されています。両国の書家間には、他分野では見られないほど密接な友好関係が築かれているようです。
 漢字の書は世界で唯一、日中間で古代から現在に至るまで共有してきた貴重な文化資源であり、当館としてもこのような民間交流がこれからも末永く続くことを願っています。