総領事のJFEケミカル棗庄工場の視察

令和7年5月22日
 5月15日、 斎藤総領事はJFEケミカル社の棗庄工場(棗庄JFE振興化工有限公司)を訪問しました。JFEケミカルは、鉄鋼分野で日本第2位の生産規模を持つJFEスチールの傘下企業で、タール蒸留分野で世界最大級の生産規模を誇ります。石炭に由来するタールの用途としては、一般的に道路のアスファルト工事くらいしか思いつきませんが、実はこれを蒸留して中に含まれる成分を取り出すことで、日常の様々な用途に活かされています。
 JFEケミカルの中国における生産拠点 は4カ所あり、うち山東省には濰坊市と棗庄市の2カ所存在します。2015年に生産開始した棗庄JFEでは、タールを蒸留して得られる様々な成分を製品化しています。これらはその後、例えばゴム製品の補強材として最終的に自動車タイヤとなったり、アルミ二ウムを製造する際に使われる電極となったり、一般的には防虫剤として知られるナフタレン、あるいは電源コードなどのビニール製品を柔らかくするための可塑剤原料になるなど幅広く使われます。同社製品の販売先は、一部の輸出を除きほぼ全てが山東省内の企業向けだそうです。
 棗庄市の近代化を押し進めたのは、1878年に中国初の株式会社となった中興煤鉱公司に遡る石炭産業です。近年はとかく脱炭素化に注目が集まりますが、石炭の利用価値は、鉄を作る際の熱源等だけでなく、このように応用範囲が広いことを考えれば、その重要性は依然として大きいものがあります。JFEケミカルの日本の研究所では、タール蒸留後の成分の新たな利用価値について研究が進められているそうです。日本企業の数こそ少ない棗庄市ですが、そこでもこのような分野で大きく貢献しているJFEグループの活躍ぶりを知り、大変心強く感じました。
 
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